この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
ある地方都市の小売店でまじめに働いていた派遣社員の店員さんから、派遣先の店の不正を告発したことから解雇されるというひどい仕打ちを受けたという相談を受けました。派遣先の店の商品陳列棚からなくなった商品の数と、レジできちんと代金が支払われた商品の数が一致しないという不思議な現象が続くことに疑問を感じたのが、そもそもの発端でした。誠実なその店員さんは、別の従業員が、知人である顧客と通じてレジを通さずにこっそり商品を流しているのではないかとの疑いを強め、上司にやんわりと調査するよう求めました。ところがこれを聞かされた店を統括する店長は、店員さんの進言を取り上げるどころか、職場の同僚を陥れようとしているものと邪推して、店員さんの雇い主である派遣会社に対し、この店員さんの店への出入り禁止を通告しました。店員さんは、気の毒にも派遣会社を解雇されてしまいました。
解決への流れ
証拠関係から勝利できる可能性が高いと考え、その店員さんは、会社を相手に解雇の撤回を求める地位確認請求訴訟を起こしました。地位確認請求訴訟は、何期日かが持たれ準備書面と証拠の提出が何回か繰り返されました。しかし派遣会社自身が「正義の訴え」をしたこの店員さんの解雇に正当な理由がなかったことを認めざるを得なくなり、最後には、派遣会社がこちらの請求を丸ごとのんで、裁判が終結しました。判決で全面勝訴するよりも珍しいといわれる「請求の認諾」という出来事でした。店員さんは、解雇され支給されなくなった賃金と遅延利息の全額を会社から受け取ることができました。
この訴訟は東京地裁が舞台でした。しかし担当した中堅書記官は「請求の認諾」の調書を作るのは初めてだ、と言って驚いていました。解雇が不当であるという信念を強く持ち続けることと、強い裏付け証拠がセットでそろえば、裁判になっても会社と強く闘うことができます。