この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
依頼者は、神奈川県内の不動産賃貸業を営む方。自己の所有する土地を賃貸し、土地の賃借人が土地上に建物を建て、居住していた。その後、土地の賃借人は死亡し、土地の賃借人の子どもが引き続き建物に居住していたが、その子ども(居住者)は土地の地代を支払わず、その上全くコミュニケーションが取れない状態であった。建物はひどく損傷し、建物内はごみで溢れている上、居住者がときおり奇声を発するということで近所からも苦情が寄せられていた。そこで、居住者には建物を収去した上で土地を明け渡してほしいと考え、当事務所へ依頼された。「滞納賃料を支払って欲しい、このまま滞納が続くようであれば退去して欲しい」とのことで当事務所へ依頼。
(1)交渉の試みまずは早期の解決をはかるべく弁護士が本件建物に赴き、居住者とのコミュニケーションを試みた。しかし、居住者は外界との接触を強く拒絶しており、交渉は困難と考え、やむを得ず法的手続にて建物の収去と土地の明け渡しを求めることにした。(2)賃貸借契約の解除と訴訟提起居住者に対して、弁護士から内容証明郵便を送付して、賃貸借契約を解除する旨、建物を収去した上で土地を明け渡す旨請求した。その上で、居住者を被告として、建物の収去、土地の明渡し・滞納地代の支払・解除後の使用料相当損害金の支払を請求する訴訟を提起した。(3)強制執行訴訟では、こちら側の主張内容が全面的に認められた。もっとも、居住者が任意に判決内容に従うことは考えにくかったため、直ちに強制執行の手続に入った。執行官や強制執行補助業者と連携をとり、速やかに建物の収去および土地の明け渡しが実現された。(4)未払地代および強制執行費用等の回収強制執行を行う際には、建物内に多額の金銭が隠されていたことが判明した。そこで、この発見された金銭に強制執行を行うことで、土地の明け渡しと共に判決を得ていた未払地代、強制執行費用、訴訟費用全額を回収することができた。
建物や土地の明渡しを求める事件では、早期解決を実現するため、必ず法的手続前に相手方と交渉して任意の明け渡しが可能か見極めることにしています。任意の明け渡しが困難だと判断した場合には、早期に法的手続をとります。本件のようなゴミ屋敷での建物や土地の明渡しの事件では、未払いの賃料や地代を回収できることはあまりありません。しかし、稀に本件のように建物内から価値物が発見されることもあり、このことを想定して未払の賃料や強制執行費用、訴訟費用について強制執行できる準備をしておくことが大切です。