この事例の依頼主
50代 男性
横断歩道上を歩行中に轢き逃げされ、脳がぐちゃぐちゃに変形し、全身至る所を骨折する瀕死の重傷を負い、奇跡的に徐々に回復を遂げていった被害者の支援を検察庁から支援依頼されて受任。刑事裁判での被害者参加活動の支援と、民事手続での損害賠償請求を合わせてしていくこととなった。加害者は、轢いた認識を一貫して否認していた。
被害者は、懸命なリハビリにより、身体的に目立った大きな後遺症は残らなかったものの、すぐに苛立つ、同時並行で作業ができない、話がくどくなり終わらない、疲れやすく突然眠りに陥る、という、高次脳機能障害特有の症状が見られた。そのため、数名の高次脳機能障害の専門医を受診して所要の検査を実施したが、いずれも、その可能性の指摘に留まり、後遺障害等級としては14級程度しか得られないことが予想される診断書の取得しかできなかった。このような経過の中、刑事裁判では被害者参加が行われ、ご本人が聞きたいこと、知りたい真実について何度もリハーサルを得た上で、ご本人自らの質問を実施し、一定の成果を遂げた。裁判結果は、否認したまま、有罪の実刑判決が下された。その後、高次脳機能障害の権威の医師の診察を受け、自賠責保険様式の①「頭部外傷後の意識障害についての所見」、②「後遺障害診断書」、そして決定打となる③詳細な「神経系統の障害に関する医学的意見」(これに神経心理学的検査結果を添付)の3点セットを入手し、画像所見と共に揃えて後遺障害等級認定の申請をした結果、14級の障害等級認定が予想された当初から状況が一転し、6級の障害等級認定を得ることが出来ました。これを基に保険会社と交渉の結果、当初予想された300万円程度の賠償金から大幅に増額され、約6500万円の高額の損害賠償金(慰謝料・逸失利益など)を得ることが出来た。訴訟を経ることもなく、交渉により早期終結することができた。
交通事故被害に遭われた場合、民事手続きと刑事手続とは表裏一体のお互いに影響し合う関係に立ちますので、両方を熟知した弁護士にご相談されることをお勧めします。高次脳機能障害等の後遺症認定に当たっては、正しい専門医の丁寧な意見書、日常生活に関する丁寧な弁護士の聞き取り、画像等の客観証拠の収集、これらの作業がとても重要になってきます。高次脳機能障害は、見落としの多く、また、かなりの専門性を持った医師でないと適切な意見書を書けない分野でもありますので、是非、正しい知識をもった専門家にご相談ください。