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「STAP細胞」もしも成功していなかったとしたら・・・理研に法的責任はあるか?
2014年03月13日 21時01分

理化学研究所の小保方晴子(おぼかた・はるこ)研究ユニットリーダーなどのグループが発表し、大きな注目を集めた「STAP細胞」。その論文に使われた画像やデータに不自然な点があると指摘されている問題で、新たな動きが起きている。

共同研究者の山梨大学・若山照彦(わかやま・てるひこ)教授が「研究データに重大な問題が見つかり、STAP細胞が存在するのか確信がなくなった」として、ほかの共同著者に論文の取り下げを呼びかけているのだ。

この「STAP細胞」は、小保方研究ユニットリーダーなどが作製に成功したと、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」に発表。iPS細胞につづく新たな万能細胞の発見として注目を集めたが、その後、論文の中に、画像の使い回しや、ほかの論文の無断引用があるという指摘が相次いでいた。

理化学研究所は、論文の撤回も視野に入れて調査を進めており、3月14日に中間報告を行うとしている。では、もし仮に、STAP細胞の研究データに問題があり、実は作製に成功したとはいえないものだった場合、理化学研究所に何らかの法的な責任が生じる可能性はあるのだろうか。冨宅恵弁護士に聞いた。

理化学研究所の小保方晴子(おぼかた・はるこ)研究ユニットリーダーなどのグループが発表し、大きな注目を集めた「STAP細胞」。その論文に使われた画像やデータに不自然な点があると指摘されている問題で、新たな動きが起きている。

共同研究者の山梨大学・若山照彦(わかやま・てるひこ)教授が「研究データに重大な問題が見つかり、STAP細胞が存在するのか確信がなくなった」として、ほかの共同著者に論文の取り下げを呼びかけているのだ。

この「STAP細胞」は、小保方研究ユニットリーダーなどが作製に成功したと、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」に発表。iPS細胞につづく新たな万能細胞の発見として注目を集めたが、その後、論文の中に、画像の使い回しや、ほかの論文の無断引用があるという指摘が相次いでいた。

理化学研究所は、論文の撤回も視野に入れて調査を進めており、3月14日に中間報告を行うとしている。では、もし仮に、STAP細胞の研究データに問題があり、実は作製に成功したとはいえないものだった場合、理化学研究所に何らかの法的な責任が生じる可能性はあるのだろうか。冨宅恵弁護士に聞いた。

●理化学研究所に「使用者責任」はある?

「現在報道されている事実関係を前提に検討しますと、理化学研究所が積極的に論文の発表に関与していたわけではなく、研究の中心的な存在であった小保方氏が所属している機関が理化学研究所であったに過ぎないと認められます。

この事実関係を前提に、理化学研究所が負う可能性がある法的責任としては、まず使用者としての不法行為責任が考えられます」

それはどんな性質の責任なのだろうか。

「使用者としての不法行為責任は、自らの監督下にある従業員が職務中、あるいは外見上職務中であると評価される場合に、第三者に加えた損害について、使用者が負う責任です。

ただし、この使用者としての不法行為責任は、あくまで第三者に『損害を与えた場合』に、それを賠償する制度ですから、損害がなければ生じません。

今回の件は、研究の成果を『ネイチャー』誌に発表したことに留まりますので、同誌が小保方氏らの論文発表により金銭的な損害を被っていなければ、理化学研究所が使用者として何らかの損害賠償を行う義務を負うということはないと思います」

研究費についてはどうだろうか。

「研究に対して、公的資金が投入されている場合は、それが適正な形で研究活動に使用されるために、補助金適正化法という法律があります。

この補助金適正化法では、研究結果を偽って補助金等を申請し補助金を受領した場合に、研究者個人や研究機関が受領した補助金の返還を義務付けられています。

ただ、今回の件では、『ネイチャー』誌に発表した論文に基づいて補助金を受領するところまでは至っていないようです。したがって、この法律が問題になることはないだろうと思います」

●ウソの研究発表を防ぐ法的な枠組みは必要?

「論文の発表にあたっては、研究成果の真偽を確かめるための『査読』というプロセスがありますが、費用や時間との関係で、査読のみで研究成果の真偽を確定することは困難です。

つまり、研究成果の真偽は、他の研究者や研究機関が、論文発表後に行う検証に委ねざるを得ないという実情があります」

それで、ねつ造を防ぐことは可能なのだろうか。

「仮の話ですが、他の研究者や研究機関の検証により、研究成果がねつ造されたものであることが判明した場合、発表を行った研究者は信用を失い、研究を継続することが事実上困難になります」

つまり、研究者たちが互いに検証しあう仕組みが、抑止力ともなっているわけだが、そこに加えて法規制をする必要はないのだろうか。

「研究成果のねつ造の問題は、他者に損害を与えた、あるいは不正に補助金等を受け取ったという場合を除いて、法律によって規制するのではなく、他の研究者や研究機関の検証に委ねることでよいと思います。これにより自由で積極的な研究活動が保障されるのではないでしょうか。

今回のSTAP細胞についても、仮に研究者や研究機関による検証によって論文の問題が判明したとすれば、そういった仕組みが有効に機能していることを示すものといえるのではないでしょうか」

このように冨宅弁護士は述べていた。3月14日に、理化学研究所がどのような中間報告を発表するのか。その内容が注目される。

(弁護士ドットコムニュース)

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