7678.jpg
「偽装結婚」で逮捕、容疑者は「愛し合っていた」と否認…偽装と判断するポイントは?
2017年01月30日 10時02分

「偽装結婚」したとして、都内に住む中国籍の女性(31)と日本人男性(53)が1月11日、電磁的公正証書原本不実記録・同供用の疑いで警視庁に逮捕された。

報道によると、女性はマッサージ店従業員、男性は会社員で3年前に婚姻届を提出。同居はしておらず、女性は勤務先の店舗で寝泊まりしていたそうだ。警察は、日本での在留資格を取得するための「偽装結婚」と見ているが、女性は「夫婦として愛し合っていた」と否認しているという。

どんな場合に偽装結婚と言えるのだろうか。元検事の山田直子弁護士に聞いた。

「偽装結婚」したとして、都内に住む中国籍の女性(31)と日本人男性(53)が1月11日、電磁的公正証書原本不実記録・同供用の疑いで警視庁に逮捕された。

報道によると、女性はマッサージ店従業員、男性は会社員で3年前に婚姻届を提出。同居はしておらず、女性は勤務先の店舗で寝泊まりしていたそうだ。警察は、日本での在留資格を取得するための「偽装結婚」と見ているが、女性は「夫婦として愛し合っていた」と否認しているという。

どんな場合に偽装結婚と言えるのだろうか。元検事の山田直子弁護士に聞いた。

●同居事実や生計などから「婚姻実態」を判断

ーー「在留資格」とはどのようなもの?

外国人が日本に在留するには、類型化された「在留資格」を申請し、法務大臣からの許可を受ける必要があります。そして、外国人は、在留資格で定められた範囲でのみ活動が許可されています。在留期間は、在留資格ごとに定められており、在留期間が経過後にも、日本での滞在を希望する場合、期間の更新許可を受ける必要があります。

在留資格の中には、「日本人の配偶者等」という資格があります。この資格の該当者は、日本人の「配偶者」もしくは「特別養子」または「日本人の子として出生した者」とされています。この資格では、活動範囲が制限されることはなく、資格外活動を理由として、在留期間の更新申請が不許可とされることはありません。

このため、外国人女性も、日本人の男性の配偶者という在留資格を取得しておけば、マッサージ店などで長期間働くことができることとなります。

ーー婚姻届を出しているのに、なぜ「偽装」結婚になるの?

結婚については、民法に婚姻として規定されています。婚姻の成立には、「婚姻届の提出」という形式的要件の他、「婚姻意思の合致」という実質的要件も必要とされています。

この婚姻意思の合致を、どう考えるかについては、さまざまな見解があります。ただし通常、婚姻届の提出をした当事者に、「婚姻成立の効果」を受ける意思がまったく認められないような場合には、婚姻意思の合致は認められず、「偽装」と評価されることとなります。

婚姻成立の効果として、夫婦に、同居し、協力し扶助する義務(民法752条)が生じるほか、夫婦財産制(民法760条等)の適用や、一方の死亡により相続権が発生する効果、その間に生まれた子が嫡出子の身分を取得する効果等があります。

婚姻意思の合致がないにもかかわらず、これがあると偽装して、婚姻届を提出する行為は、「虚偽の申立て」として、公正証書原本不実記載・同行使罪(刑法157条)にもあたります。

ーー具体的には、どの部分で判断される?

本件のようなケースでは、婚姻届を提出した後、同居した事実があるかどうか、定期的な接触があるかどうか、生計を共にしている事実があるかどうか、双方の親族に紹介・報告した事実があるかどうかなど、諸般の事情を考慮し、およそ婚姻実態がなく、また、それを代替する特別事情もないような場合には、偽装結婚と認定され得ます。

「愛しあっている」ことは、夫婦実態を持つ動機とはなりますが、実態の伴わない動機では、当然のことながら、不十分です。

ーー偽装結婚をすると、どのような処分になるのか

公正証書原本不実記載・同行使罪の法定刑は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

偽装結婚を生業にし、これを繰り返していたブローカーであれば、偽装結婚当事者に比して、量刑が重くなる可能性はあります。ただ、初犯の当事者は、懲役刑に執行猶予を付した判決となるのが一般的なようです。

また、行政処分ではありますが、偽装結婚が認定されれば、日本人の配偶者等の在留資格が取り消される結果、当該外国人は、在留資格を失い、日本からの退去を余儀なくされることとになります。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る